主な肩関節疾患

肩腱板断裂

腱板とは、肩を動かす深部にある筋肉の上腕骨付着部のことであり、棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋の4つの筋の総称です。
これらは加齢によって変性して断裂を起こしたり、スポーツや転倒による外傷で生じたりします。
主な症状は、肩の痛みと挙上障害です。
断裂した腱板は自然に治癒することはほとんどなく、保存治療で症状が軽快しない場合、根治療法として鏡視下腱板修復術が必要になります。

図1  MRI 右肩腱板断裂

反復性肩関節脱臼・亜脱臼

外傷により肩の脱臼を生じた時、肩の靭帯等が損傷され、肩の脱臼不安感や痛みが続くのが典型的な反復性脱臼です。
これらに対しては、鏡視下バンカート修復術等の靭帯修復術が必要です。
しかし、明らかな脱臼や大きな外傷がなくても、肩の靭帯や関節唇が損傷されることがあり、レントゲンやMRIで明らかな病変が認められなくても、肩の不安定症(亜脱臼等)になっていることがあります。
この場合、肩の痛みやずれるような違和感が継続します。
これらを正確に診断するには肩の専門医の診察が必要です。
また、これらの病態に対しても、鏡視下肩関節唇・靭帯修復術等が必要になることが多々あります。

肩関節拘縮

いわゆる五十肩が悪化・難治化した状態のことで、肩関節が固くなり、動きにくくなり、かつ痛みを生じている病態です。
五十肩とは一般的に、特に誘因なく40代、50代の人が肩の痛みと可動域制限を生じる病態のことですが、ほとんどは、保存治療(体操、投薬、注射、温熱療法、物理・理学療法)で時間の経過とともに改善します。
しかし、中には、1年以上を経ても強い痛みと可動域制限が残存する場合があります。
これらの難治性の肩関節拘縮に対しては、患者さまの生活環境や仕事、ニーズを考慮し、鏡視下肩関節授動術(肩がよく動くようにする手術)を行うことがあります。
また、肩関節拘縮は肩周囲の骨折等の外傷後に生じることもあります。

投球障害肩

投球だけに限らず、腕を頭の横で回す動作(オーバーヘッド動作)を行うスポーツ(野球、ソフトボール、テニス、バレーボール、剣道、投てき競技など)で生じる病態です。
繰り返しのオーバーヘッド動作で生じることが多いですが、一回の強い負荷のオーバーヘッド動作で負傷することもあります。
症状は、オーバーヘッド動作での肩の痛みですが、ひどくなると日常生活の動作でも痛みを生じます。
不安定感や引っかかり感を自覚することもあります。
この病態も肩の専門医でないと正確に診断することが難しく、多くの症例で上方関節唇(SLAP病変)および靭帯損傷があり、時には腱板断裂を合併していることもあります。
治療としては、一定期間のリハビリ等の効果がない場合、鏡視下上方肩関節唇・靭帯修復術等を行います。

変形性肩関節症・腱板断裂性肩関節症

主に加齢性の変性疾患として生じる病態です。
肩関節を構成する軟骨・骨・関節包(靭帯)・腱板等が変性をきたし、肩関節機能が低下します。
症状は痛み、可動域制限、挙上障害、筋力低下などです。
治療として、投薬・物理療法・注射・リハビリ等の保存治療がまず行われますが、改善しない場合、人工骨頭置換術や人工関節置換術(リバースショルダーを含む)、鏡視下上方関節包再建術(大腿筋膜移植術)等が行われます。

図2  右変形性肩関節症(骨頭壊死)